☆ナレーション『南ドイツの古都』 :城達也
さる都市のヨーロッパに虹とともに思い残した、夏があると思わないか
例えば、南ドイツの古都で雨
入口に可憐な鈴をつけたカフェで、紅茶茶碗を掌に包み
指先を温めていた夏もあった
少し曇った窓ガラスごしに黒々と濡れた石畳が見え
塗り替えて間もない砂糖菓子色の家並みが
見捨てられた絵本のように、青ざめていた
こんなことがあってはならない、と思いながらも
カフェの客は、私一人で、次のバスを待つ間の時間
何をする気もなく座っていたのだ
白い前掛けが目にしみる女主人が
降りこめられた旅人を、気の毒そうに、レジの傍で見ていた
あの時、ババリアの空の下の、晴れやかな夏を一つ
私は、カフェの椅子に、残してきたと思っているのだ
========
▼カタリ・カタリ / マントヴァーニ
『楽曲解説』
1908年にリッカルド・コルディフェルロ(詞)とサルヴァトーレ・カルディロ(曲)が作ったナポレターナ(ナポリの歌)です。オペラ歌手のエンリケ・カルーソがカーネギー・ホールのコンサートで歌い、良く知られる曲になりました。イギリス人とし手活動したマントヴァーニは生まれ育ったのがイタリアなので、この曲を含むカンツォーネには、人一倍愛しい気持ちがあったようです。別題に「うすなさけ」、「つれない心」というものがあります。
▼マリア・エレーナ / ロス・インディオス・タバハラス
『楽曲解説』
1932年にメキシコのロレンソ・バルセラータが作曲した、ワルツ調のカンシオン(歌)です。時の大統領を描いた曲だと言われていますが、今では個人にこだわらず、全女性を讃えた曲と言う方が一般的です。ロス・インディオス・タバハラスがこの曲をレコーディングしたのは1957年と大分遅かったのですが、その6年後の1963年にラジオ番組で重点的に放送したところ、全米ヒット・チャートにランクイン。そのまま曲も演奏者も、超有名になりました。