日別アーカイブ: 2016年3月2日

春はあけぼの(枕草子)

『春はあけぼの』ネットから↓

原文

春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。

夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほかにうち光て行くもをかし。雨など降るもをかし。

秋は夕暮れ。夕日の差して山の端いと近うなりたるに、烏の寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、はた言ふべきにあらず。

冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりてわろし。

現代語訳(口語訳)

春は明け方が良い。日が昇るにつれてだんだんと白くなる、その山の辺りの空が少し明るくなって、紫がかっている雲が長くたなびいている様子が良い。

夏は夜が良い。月が出ている夜はもちろんのこと、(月が出ていない)闇夜もまた、蛍が多く飛び交っている様子も良い。また(たくさんではなくて)、蛍の一匹や二匹が、かすかに光って飛んでいるのも良い。雨が降るのもおもむきがあって良い。

秋は夕暮れが良い。夕日が差し込んで、山の端がとても近くなっているときに、烏が寝床へ帰ろうとして、三羽四羽、二羽三羽と飛び急いでいる様子さえしみじみと感じる。ましてや雁などが隊列を組んで飛んでいるのが、(遠くに)大変小さく見えるのは、とてもおもむきがあって良い。日が落ちてから聞こえてくる、風の音や虫の鳴く音などは、言うまでもなくすばらしい。

冬は早朝が良い。雪が降っている朝は言うまでもなく、霜が降りて辺り一面が白くなっているときも、またそうでなくてもとても寒いときに、火などを(台所で)急いでおこして、(部屋の)炭びつまで持っていく様子も、たいそう冬にふさわしい。昼になって暖かくなると、火桶に入った炭火が白く灰っぽくなっているのはよくない。

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《独り言》ここ2~3日の「暴風雪」?から一変して、「春うらら」「春眠暁を覚えず」の感ですね。先日の降雪は、「名残り雪」そして季節は「三寒四温」の様相か?春といえば美しい季語が多いですね。「春一番」「春うらら」「朧月夜」「東風=こち」「春雷」などなど、徐々に嬉しくなる季節となりました。