JET STREAM(音楽のある風景)から ㈱燈音舎     NO・31

☆ナレーション『南ドイツの古都』  :城達也

さる都市のヨーロッパに虹とともに思い残した、夏があると思わないか
例えば、南ドイツの古都で雨
入口に可憐な鈴をつけたカフェで、紅茶茶碗を掌に包み
指先を温めていた夏もあった
少し曇った窓ガラスごしに黒々と濡れた石畳が見え
塗り替えて間もない砂糖菓子色の家並みが
見捨てられた絵本のように、青ざめていた

こんなことがあってはならない、と思いながらも
カフェの客は、私一人で、次のバスを待つ間の時間
何をする気もなく座っていたのだ
白い前掛けが目にしみる女主人が
降りこめられた旅人を、気の毒そうに、レジの傍で見ていた
あの時、ババリアの空の下の、晴れやかな夏を一つ
私は、カフェの椅子に、残してきたと思っているのだ

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▼カタリ・カタリ  / マントヴァーニ

『楽曲解説』

1908年にリッカルド・コルディフェルロ(詞)とサルヴァトーレ・カルディロ(曲)が作ったナポレターナ(ナポリの歌)です。オペラ歌手のエンリケ・カルーソがカーネギー・ホールのコンサートで歌い、良く知られる曲になりました。イギリス人とし手活動したマントヴァーニは生まれ育ったのがイタリアなので、この曲を含むカンツォーネには、人一倍愛しい気持ちがあったようです。別題に「うすなさけ」、「つれない心」というものがあります。

▼マリア・エレーナ  /  ロス・インディオス・タバハラス

『楽曲解説』

1932年にメキシコのロレンソ・バルセラータが作曲した、ワルツ調のカンシオン(歌)です。時の大統領を描いた曲だと言われていますが、今では個人にこだわらず、全女性を讃えた曲と言う方が一般的です。ロス・インディオス・タバハラスがこの曲をレコーディングしたのは1957年と大分遅かったのですが、その6年後の1963年にラジオ番組で重点的に放送したところ、全米ヒット・チャートにランクイン。そのまま曲も演奏者も、超有名になりました。

1 thought on “JET STREAM(音楽のある風景)から ㈱燈音舎     NO・31

  1. 児玉進矢

    最近知ったのですが、イギリスの大憲章=マグナカルタの原本はラテン語で書かれているんですね。私はてっきり英語かと思っていました。調べてみると、ラテン語は古代ローマ帝国で広く使われ、カトリック教会の公用語として学術世界で使用されてきたようです。この言葉を今の日本でも結構耳にするんですね。シーザーが話した言葉を2000年後のわたしたちも話しているとは、、ちょっとしたロマンです。

    たとえば、わたしたちがよく知っている欧州自動車メーカーのアウディ(Audi)は「聴く」、ボルボ(Volvo)は「私は回る」という意味のラテン語、サッカーJ1の湘南ベルマーレも「美しい海」という意味のラテン語だそうです。何となく上品で洗練された響きがありますね。社名としてだけではなく、エトセトラ(etc.)、バーサス(vs.)、デファクト(de facto)なんてもの日本でラテン語とは知らずに普段使われています。

    ただ、どうも腑に落ちないのは、「ラテンアメリカ」とか「ラテン音楽」は明るく陽気でリズミカルなイメージがあり、ラテン語の重厚感のあるアカデミックな雰囲気とストレートに結びつかないんですね。これは、ラテンアメリカ(中南米)は征服された歴史からスペイン語やポルトガル語が公用語となり、これらの言語はラテン語を語源としているのでラテンアメリカと呼ばれるようになったそうで、そこに住んでる人の気質やリズム感とは無関係なんですね。中世の大航海時代からのたかだか数百年の年月が人間そのものを変えるわけではないんですね。大河ドラマを観て感情移入できるのと同じかも、、当たり前のことでした。

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